本節はネットワークカードを設定する場合にのみ作業を行っていきます。
        ネットワークカードを利用しないのであれば、ネットワークカードに関する設定は、おそらくすべて不要なはずです。
        そのような場合は、ランレベルディレクトリ (/etc/rc.d/rc*.d)
        から、シンボリックリンク network を削除してください。 これは
        7.2.「LFS-ブートスクリプト-20150222」
        にてブートスクリプトをインストールした後に行ってください。
      
          どのネットワークインターフェースが起動したり停止したりするかは /etc/sysconfig/ ディレクトリ配下のファイルの指定によります。
          このディレクトリには、設定を行ないたい各ネットワークインターフェースに対するファイル ifconfig.xyz を準備します。 この「xyz」はネットワークカードインターフェースに対する名称 (例えば eth0 など)
          です。 このファイルにはネットワークインターフェースの属性、つまり IP アドレスやサブネットマスクなどを定義します。
          ファイルベース名は ifconfig
          とすることが必要です。
        
![[注記]](../images/note.png) 
          前節に示した手順を実施しなかった場合、Udev は、システムの物理的な特性に従った enp2s1 などのような名称をネットワークカードインターフェースに割り当てます。 インタフェース名がよく分からない場合は、システム起動直後に常に ip link を実行してください。 繰り返しますが ifconfig.xyz という名称はネットワークカードインターフェースを示す正しい名称 (つまり ifconfig.enp2s1 や ifconfig.eth0) としなければなりません。 これを行っていない場合には、システム起動時にネットワークインターフェースが初期化されないことになります。
以下のコマンドは、eth0 デバイスに対して固定 IP アドレスを設定するファイルを生成する例です。
cd /etc/sysconfig/
cat > ifconfig.eth0 << "EOF"
ONBOOT=yes
IFACE=eth0
SERVICE=ipv4-static
IP=192.168.1.2
GATEWAY=192.168.1.1
PREFIX=24
BROADCAST=192.168.1.255
EOF
        各変数の値は各ファイルごとに適切なものに設定してください。
          ONBOOT 変数を「yes」に設定した場合、システム起動時に
          System V ネットワークスクリプトがネットワークインターフェースカード (network interface card;
          NIC) を起動します。 「yes」以外に設定すると、ネットワークスクリプトからの NIC の起動がなくなり、NIC
          は自動では起動しなくなります。 ネットワークインターフェースは ifup や ifdown
          といったコマンドを使って、起動や停止を行うことができます。
        
          IFACE 変数は、インターフェース名を定義します。 例えば eth0
          といったものです。 これはネットワークデバイスの設定を行うすべてのファイルにて必要な定義です。
        
          SERVICE 変数はIP アドレスの取得方法を指定します。
          LFS-ブートスクリプトは IP アドレス割り当て方法をモジュール化しています。 そして /lib/services/ ディレクトリに追加でファイルを生成すれば、他の IP
          アドレス割り当て方法をとることもできます。 通常は DHCP (Dynamic Host Configuration
          Protocol) において利用されるものです。 これについては BLFS ブックにて説明しています。
        
          GATEWAY 変数は、デフォルトゲートウェイが存在するならその IP
          アドレスを指定します。 存在しない場合は、の変数設定を行っている一行をコメントにします。
        
          PREFIX 変数はサブネットマスクにて用いられるビット数を指定します。 IP
          アドレスの各オクテット (octet) は 8 ビットで構成されます。 例えばサブネットマスクが 255.255.255.0
          である場合、ネットワーク番号 (network number) を特定するには最初の三つのオクテット (24ビット)
          が用いられることを意味します。 もし 255.255.255.240 であるなら、最初の 28 ビットということになります。 24
          ビットを超えるプレフィックスは、通常は DSL やケーブルを用いたインターネットサービスプロバイダー (Internet
          Service Provider; ISP) がよく利用しています。 上の例 (PREFIX=24) では、サブネットマスクは
          255.255.255.0 となります。 PREFIX
          変数の値は、ネットワーク環境に応じて変更してください。 これが省略された場合は、デフォルトの 24 が用いられます。
        
より詳しくは ifup の man ページを参照してください。
          インターネットへの接続を行う場合には、ドメイン名サービス (domain name service; DNS)
          による名前解決を必要とします。 これによりインターネットドメイン名を IP アドレスに、あるいはその逆の変換を行います。
          これを行うには ISP やネットワーク管理者が指定する DNS サーバーの割り振り IP アドレスを /etc/resolv.conf ファイルに設定します。
          以下のコマンドによりこのファイルを生成します。
        
cat > /etc/resolv.conf << "EOF"
# Begin /etc/resolv.conf
domain <Your Domain Name>
nameserver <IP address of your primary nameserver>
nameserver <IP address of your secondary nameserver>
# End /etc/resolv.conf
EOF
        
          domain ステートメントは省略するか、search ステートメントで代用することが可能です。 詳しくは resolv.conf の man
          ページを参照してください。
        
          <IP address of the
          nameserver> (ネームサーバーの IP アドレス) の部分には、DNS が割り振る適切な IP
          アドレスを記述します。 IP アドレスの設定は複数行う場合もあります。(代替構成を必要とするなら二次サーバーを設けることでしょう。)
          一つのサーバーのみで十分な場合は、二つめの nameserver の行は削除します。
          ローカルネットワークにおいてはルーターの IP アドレスを設定することになるでしょう。
        
![[注記]](../images/note.png) 
          Google Public IPv4 DNS アドレスは 8.8.8.8 と 8.8.4.4 です。
          システム起動時には /etc/hostname
          が参照されてシステムのホスト名が決定されます。
        
          以下のコマンドを実行することで /etc/hostname
          ファイルを生成するとともに、ホスト名を設定します。
        
echo "<lfs>" > /etc/hostname
        
          <lfs>
          の部分は、各システムにおいて定めたい名称に置き換えてください。 ここでは完全修飾ドメイン名 (Fully Qualified
          Domain Name; FQDN) は指定しないでください。 その情報は /etc/hosts ファイルにて行います。
        
          IPアドレス、完全修飾ドメイン名 (Fully Qualified Domain Name; FQDN)、エイリアスの各設定を
          /etc/hosts ファイルにて行います。
          その文法は以下のようになります。
        
IP_address myhost.example.org aliases
        インターネットに公開されていないコンピューターである場合 (つまり登録ドメインであったり、あらかじめ IP アドレスが割り当てられていたりする場合。 普通のユーザーはこれを持ちません。) IP アドレスはプライベートネットワーク IP アドレスの範囲で指定します。 以下がそのアドレス範囲です。
Private Network Address Range      Normal Prefix
10.0.0.1 - 10.255.255.254           8
172.x.0.1 - 172.x.255.254           16
192.168.y.1 - 192.168.y.254         24
        x は 16 から 31、y は 0 から 255 の範囲の数値です。
IP アドレスの例は 192.168.1.1 となります。 また FQDN の例としては lfs.example.org となります。
ネットワークカードを用いない場合でも FQDN の記述は行ってください。 特定のプログラムが動作する際に必要となることがあるからです。
          以下のようにして /etc/hosts ファイルを生成します。
        
cat > /etc/hosts << "EOF"
# Begin /etc/hosts (network card version)
127.0.0.1 localhost
<192.168.1.1> <HOSTNAME.example.org> [alias1] [alias2 ...]
# End /etc/hosts (network card version)
EOF
        
          <192.168.1.1> や
          <HOSTNAME.example.org>
          の部分は利用状況に応じて書き換えてください。 (ネットワーク管理者から IP
          アドレスを指定されている場合や、既存のネットワーク環境に接続する場合など。). エイリアスの記述は省略しても構いません。
        
          ネットワークカードを設定しない場合は、以下のようにして /etc/hosts ファイルを生成します。
        
cat > /etc/hosts << "EOF"
# Begin /etc/hosts (no network card version)
127.0.0.1 <HOSTNAME.example.org> <HOSTNAME> localhost
# End /etc/hosts (no network card version)
EOF